八時半くらいに起きたと記憶している。
この旅で食べてなかったモーニングにしようと駅前を歩いた。結局、こちらでいただく。
白ばら喫茶 福山駅前店
https://tabelog.com/hiroshima/A3403/A340301/34009534/
暮れも暮れ12/31に営業してくれているのがありがたい。店の制服を着た女の子がふたりシフトに入っていた。見目もよい子たちで、ツインピークスのダブルアールダイナーのようだった。
鞆鉄バスにのる。以前よく使っていた路線の車窓を懐かしく眺める。
ノスタルジイを感じるファクターのひとつに、「最初から古かった」というのはかなりありそう。そんなことを考えているおれを乗っけて、緑色のバスは瀬戸内の進んでいく。
たじりこども園前で下車。ここからはスネーク。母の実家の近所なのだ。いい年したイトコがなんの知らせもなく大晦日にくるなんて事態は避けなければならない。というのは建前で、二親等の祖母がぼけてしまったためだった。疎遠になっている三親等四親等たるおれが尋ねていくのはちょっとバツがわるいのだ。
まずはじいちゃんのお墓参りを済ませようとお寺さんに向かった。山肌に段々畑のように墓地があるタイプのお寺だ。振り向けば海が見えるのは、瀬戸内海の墓地あるあるかもしれない。
なにぶん久しぶりすぎて、お墓の場所がわからなかった。ゆっくり探そうにも、大晦日だからか、ひとが多い。
「こんにちは」
このあたりのひとは、知らないひとにも挨拶するのを忘れていた。
「こんにちは」
言い方を真似て返したけど、イントネーションの違いはばれてるんだろうなぁ。
まぁまたくればいいさ。そう決め込んで、結局、そうそうに退散してしまった。
その後、近辺を散策した。むやみやたらに歩き回るのではなく、グーグルマップを見ながらだ。
子どもの頃は、イッコ下のイトコについて回っていた。子どもの頃のイトコの行動範囲がそのまま、子どもの頃のおれの行動範囲になっていた。先を知らない道、いったことのない場所が、しかるべきだったのだ。
今回歩いてみて思ったのは、
・子どもの頃の行動範囲というのは、思いのほか狭い。
・グーグルマップは役に立つ。
とはいえ、スマホをのぞきこみながら歩くのはなんか味気ないものかもしれない。
凪がすぎて、鏡のように空を写している海面。
点々としているのはカモ。連中、海もいけるの知らなかった。
子どもの頃に過ごした町や時間から、ある程度、距離ができてから、再訪するのは頭の中をくすぐられているようで楽しかった。
小雨が降り始めた。再びバスにのって、今度は鞆の浦へ。
主要なところはすでに回っているので、主に周辺を散策。
鞆の浦の町並み。
山のほうも、いい感じだった。
グーグルマップによると近くに歩いて上陸できる無人島があるようだ。
おれが書かなくても、ここに詳しく載っていた。
・まったく観光地化されていない。
・観光客がいない。
・表参道が海のほうに延びている廃寺がある。
よかったどころではなかった。ここはめちゃくちゃよかったのだが、同行者に這いつくばって、岩場を登らせるのもどうかと思うので、おひとりさま専用の観光地。
お腹が減ったので、なにか食べようと思うのだが、大晦日でお店がやってない。けっこう探したが、どこも開いてなかった。鯛めしと思ってたのに残念だった。
福山にもどってきてもご飯食べられることを探した。
結局、天満屋のレストランフロアで、出雲そばにした。なんで出雲と思われるかもしれないが、ここはとんちで年越しそばというわけだ。
天満屋ではほかに、あんもちを買った。あんもちは東京になく、母が懐かしがっていたものだ。
ロッカーに預けていた荷物を出すと、ちょうどこだまが到着する時間だった。あわてて飛び乗ってしまったが、まだまだ時間はあったので、もっと福山でゆっくりすればよかった。もしくはのんびり在来線で岡山でよかった。
そんなわけで、鹿児島中央から使い始めた切符の最終地、岡山に着く。ノープランで、早めに着いた。
開いているお店は少なく、ひとは多い。その結果、開いてるお店にひとが殺到している。深夜バスの発車時間までのんびり時間をつぶせるような雰囲気ではなかった。
とりあえず、バス乗り場を把握しておこうと、プリントアウトした地図を片手にあたりをうろうろしていると、女の人が声をかけてくれる。バス停の場所を教えてもらう。旅の終焉ということもあってか、親切が身にしみる。
バスの発車は22:15。それまで時間をつぶすのが大変だった。
すき家とか宮本むなしはやってるけど、そういうところで、どうでもいいカロリーは取りたくないため、ファミマーでおにぎりを買って食べたのだった。
■追記
2018年1月1日のこと。
予約を取ったときは指定席じゃないのだが、バスに乗るときには席は割り振られている。夜行バスはそんなシステムになっていることが多く、このバスもそれ。
乗り込むと窓際の席にはマスクをした兄さんがすでに着席しており、おれはその隣の席を指示された。
このお兄さん深夜バスのヘビーユーザーのようで肝が座ってる。寝始めると膝でぐいぐい押してくる。押されてるアピールで押し返してみてもまったくへっちゃらみたい。
こんなので東京まで過ごすの本当にいやだったのだが、眠気に負けて意識は次第に断続的になる。
サービスエリア休憩が二回ほどあったがどちらも外に出たが、隣の兄さんはずっと寝てた。ヘイトがたまっているのでそのままずっと起きないで欲しいと思った。
永久とも思えた夜を越えて7:30ようやくバスタ新宿に到着。
帰宅して8:30。洗濯機を回してすぐに家を出る。
SPA成城の500円早朝サウナで旅の疲れと隣の兄さんへのヘイトを洗い流そう!
そう思って9:00に入館するも四段あるサウナのベンチが全埋まりの大混雑。おいおい元旦の朝だぜ、家でのんびりしてろよ。その場ではそう思ったが、どうやら日本では古来より、元旦はひとっ風呂浴びる醇風美俗があるとあとで知る。
10:00以降は延長料金を取られるとのことで、ようやくひとが減ってくるも、おれだって出なきゃならなかった。
この日の朝、なにを食べたかなんて、いまとなってはまったく思い出せなくなっている。まっすぐ帰宅後、がんばって洗濯物を干してから就寝して、この年の旅はすべて完了。