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おすすめの任侠・やくざ映画10選

任侠・やくざ映画をうんと見た。
日本最多クラスの収蔵タイトルを誇るレンタルショップ――TSUTAYA歌舞伎町店で借り尽くして、見尽くした。(ネオヤクザのジャンルはノータッチ)
というわけで、おすすめのものをまとめておきます。
これから見るひとの参考になったらうれしいです。
制作された順に並べています。

 
「車夫遊侠伝 喧嘩辰」
任侠ものブーム以前に作られたモノクロ作品。あとから考えたら結果的にこれが任侠もののイデアだったよねーという映画。親分や悪人のキャラ、決着のつけ方があまりにも見事。名匠加藤泰監督の最高傑作。

「懲役太郎 まむしの兄弟」
女性警官をレイプするをやめた理由がマッポとやるとちんぽが穢れるからなどモラルハザードがはんぱじゃない。コメディ映画としてかなりの名作であることは、「ブルース・ブラザーズ」の元ネタになったことでもあきらか。

「女渡世人 おたの申します」
二作しかないシリーズの二作目。義理も人情もない、世間から疎まれる渡世人の世界を描いている。鶴田浩二高倉健という大スターがいたためにあまり実現しなかった藤純子×菅原文太(ブレイク前)の組み合わせは任侠もののベストカップル。(この組み合わせは「緋牡丹博徒 お竜参上」や「日本女侠伝 激斗ひめゆり岬」でも実現している。どちらも名作)

「人斬り与太 狂犬三兄弟」
菅原文太はこの映画で、まむしの兄弟で培った誇張演技をシリアス路線に応用して成功している。クールでかっこいい高倉健の模倣から脱却し、オラついた熱い男、菅原文太が誕生した瞬間だ。ヒロインの全裸ダッシュ、犬死する田中邦衛など名シーンをいくつも内包している。前作「現代やくざ 人斬り与太」も名作。

仁義なき戦い
監督の深作欣二、脚本家の笠原和夫、主演の菅原文太。日本映画史に名を遺すそうそうたるメンバーがそれぞれキャリアハイをたたき出した奇跡的な作品。五作続いたシリーズ全部が面白いんですけど、全作を通しての悪役にしてヒロイン――山守親分を演じる金子信雄と、二作目でテキヤを演じる千葉真一は必見。

県警対組織暴力
広島県警の腐敗を題材にした異色作かつ問題作。最初から最後まですごい熱量で突っ走る。取り調べシーンがやばいと世界的に有名。あっちがやくざ側視点なら、こっちは警察側視点。「仁義なき戦い」の対となるような作品。

「日本暴力列島 京阪神殺しの軍団」
仁義なき戦いが大ヒット、実録ものブームが始まった。実録ものとは、現実に起きたことを下敷きにしたドキュメンタリータッチの映画のこと。仁義なき戦いという現象・事件は「実録もの」という言葉を日本中に流行らせるまでに及んでいたのだった。これはその流れで誕生した傑作。当時もタブーだった在日やくざを題材にした意欲作。小林旭の迫力・存在感がものすごい。

「暴動島根刑務所」
刑務所もので暴動を扱った変化球だが、食うこと=生きることみたいなテーマになってて当時の東映らしからぬ重厚さを兼ね備えた作品。上がつかえていて当たり役に恵まれなかった松方弘樹の代表作。

ダイナマイトどんどん
ブームがすっかり終わった頃に作られたやくざコメディ。オラつく菅原文太、ギャグ担当の田中邦衛、憎たらしい金子信夫、ひとりシリアスな北大路欣也など、任侠・やくざ映画ファンが見たかったものをすべて詰め込んだ最高のカーテンコール。配給は大映なのに、東映のリソースを使ってこの映画を作りあげる東宝出身の岡本喜八がほんとすごい。粗製乱造だった東映やくざ映画とは違って、時間と金かけて作ってくれたのもありがたかった。「車夫遊侠伝 喧嘩辰」が任侠もののイデアなら、「ダイナマイトどんどん」はやくざ映画イデア

「ちんぴら」
青春×やくざもの。やくざに憧れた若者の末路を描いている。「これや!」と長渕剛がたちあがった「竜二」の姉妹編的位置づけ。生活感あふれるやくざの描写が見どころ。その後のアウトロー映画に決定的な影響を与えた「竜二」と「ちんぴら」はほんとうに偉大だと思う。


■まとめ
菅原文太ばっかりだった!(上にあげた十作中六作が菅原文太主演)
任侠・やくざ映画のすごさ面白さはなんだかんだいって、深作・笠原・菅原のすごさ面白さなので、偏るのもしかたないことだと思っている。
世間一般では加藤泰監督の「明治侠客伝 三代目襲名」や、三島由紀夫が激賞した「博奕打ち 総長賭博」あたりが名作とされてますので、そちらも参考に。

時代背景も踏まえた大まかな流れとしては、占領下の日本はチャンバラ映画、仇討ち映画の禁止→(サンフランシスコ講和条約以降)時代劇解禁→年末のお楽しみやっと忠臣蔵が見られる!となって時代劇ブーム→時代劇ブームが下火になってきて任侠ものが登場→年末じゃなくても忠臣蔵に似たものが見られる!となって任侠ものブーム→任侠ものブームが下火になってきて「仁義なき戦い」が登場→実録もの(いわゆるやくざ映画)ブームといった感じです。

そして、実録ものブームは数年で過ぎ去ります。突然現れた「仁義なき戦い」が、いきなり頂点だったというわけです。
ある程度、任侠・やくざ映画を消化したところで、もう一度「仁義なき戦い」を見るといいと思います。その映画のやばさがあらためて伝わってきますので。「仁義なき戦い」は本当にすごいんです。


といった感じの、おすすめの任侠・やくざ映画10選でした。

それではみなさん、よい任侠・やくざ映画ライフを!


■おまけ
記事を書き出す前に作ったリストです。
「博奕打ち 一匹竜」「博奕打ち 総長賭博」「博奕打ち 外伝」「日本侠客伝 関東編」「日本侠客伝 雷門の決斗」「昭和残侠伝 死んで貰います」「緋牡丹博徒 お竜参上」「緋牡丹博徒 お命戴きます」「日本女侠伝 激斗ひめゆり岬」「侠客列伝」「遊侠列伝」「博徒外人部隊」「博徒斬り込み隊」「現代やくざ 盃返します」「ごろつき」「現代やくざ 人斬り与太」「沖縄やくざ戦争」「三代目襲名」「戦後最大の賭場」「実録 私設銀座警察」「暴力団再武装」「やくざの墓場 くちなしの花」「仁義の墓場」「安藤昇のわが逃亡とSEXの記録」「北陸代理戦争」「鉄砲玉の美学」「日本の黒幕」「冬の華」「鬼龍院花子の生涯」「竜二」「修羅の伝説」「極道渡世の素敵な面々」「孤狼の血
このあたりはかなり面白かったです。