起床してすぐ、宿の温泉に浸かる。
宿の温泉というより、家族風呂の蛇口から温泉が湧き出ているイメージだ。
8:00すぎには宿を出た。
重い荷物を肩に、こんな風景の中歩く。
さびれきったアーケード街の端から駅側を眺める。
グーグルマップに誘われて、住宅地を歩いた。向かった先はここ。
サイト掲載の写真を見てもらえばわかるとおり恐ろしく古い温泉。腰のあたりまである慣れない水深は明治15年創業ゆえかな。雰囲気満点なのだが、地元のかたがいらして、ゆっくり入れなかった。
朝ご飯を食べてないことに気がつく。セブンでジェネリックのホットコーヒーと、ミルクフランス。朝は適当でよいと思っている。
以前、国東半島を回ったときの定期観光バスが見応えあってすごいよかったので、今回のも期待しているのだが、はたしてどうだろう。
定期観光バスの到着10分前に観光案内所で受付を済ませた。
「実は今日、お客様おひとりです」
お金を払ったあとに不意打ちを食らった。世の中にそんなパターンがあるとは考えたことがなかった。かくして観光案内所の前に到着したバスは、おれだけを乗せて走り出すのだった。
一カ所目は地元財閥の息がかかった美術館の見学。この定期観光バスを運行しているのが、その地元財閥の母体企業なのだった。
鹿児島出身の画家の作品、また桜島や開聞岳――鹿児島を題材にした絵画はわかるのだが、インドネシアかどこかの部族の祭事につかわれるお面だったり、太鼓なんかは見せられても意味わからん。趣味がいいとも思えなかった。
とはいえ、決められた時間まで熱心に絵を見た。
地元財閥の息がかかったゴルフクラブで昼食となった。地元食材をふんだんに使ったおいしいものを期待したが、別になんてことはない松花堂弁当。カニの甲羅にグラタンとかあるやつ。だったらいっそカツカレーでも良かった。国東半島のバスツアーは田舎っぽい団子汁で最高だったのに……。
おそらく地元財閥のコーポレートイメージ、ブランドイメージの向上を目指したものなのだろうが、逆効果になっている気がする。へんてこなものを見せられたり、食べさせられたりだが、午後からは一転、まともになる。
その後は長崎鼻、開聞岳、池田湖と、一般的な観光地を巡った。ガイドさんワンツーマンの定期観光バスは、思った以上にワンツーマンだった。しかしそこは歴戦のプロ。絶妙な距離感で、こちらに負担を感じさせないのだった。
知覧特攻平和会館は遺書の図書館とも称すべき場所だった。静謐な空気に襟を正す思いだ。
続けて見た知覧武家屋敷もよい場所だった。公開されている邸宅はいっぱいあるのだが、このバスツアーでは二カ所しか入らないという決まりらしく、とても残念。自由時間にしてくれたら良かったのに。
解散の地、鹿児島中央に向かうバスの中、ガイドさんは鉄板ネタを決めてくれる。特攻に向かう若者と、特攻の母とも呼ばれる鳥濱トメさんの交流を引き合いにしたお涙ちょうだいの寸劇だ。聞いてるのはおれひとりなのだが、(おそらく)いつもどおりラストは歌で締めてくれた。おれはちゃんと拍手をした。
国東半島のそれとは比ぶべくもない見るものがあまりない定期観光バスツアーだったが、とてもシュールでとても貴重な体験となった。
夕方、鹿児島中央駅に落としてもらって、定期観光バスツアーは終了。再び単独行動へ。
荷物をコインロッカーに預け、みどりの窓口で明日から使う岡山までの切符と、明日朝一の自由席特急券を購入。
普段しないような変わった行動を取ると、記憶に残りやすい。駅ビル最上階観覧車にひとり乗って、噴煙を上げる桜島の偉容を眺めた。
角度的にわかりにくいけど、山頂から噴煙があがっている。
夕食はこちらで、とんかつ川久 - 鹿児島中央/とんかつ [食べログ]
これはめちゃうまかった。
ドキュメント72時間でもやっていた桜島フェリーに乗って桜島へ。
あたりはすっかり暗い中、月讀神社 - みんなの桜島 にお参り。
桜島マグマ温泉 | 国民宿舎 レインボー桜島<公式ホームページ>
こちらで温泉とサウナをいただく。学生たちに占領されていて、入れない湯船があったが、この時期は基本的にひとがいないので、贅沢な時間を過ごしている。
帰りは桜島フェリー名物のうどんを食した。お腹は減ってないのだが、半分は取材だ。うどんの容器はプラ。紙コップをのぞき込むと、船のエンジンの振動を受けた水が、コップの中で六角形の波紋を作っていた。
天文館にあったモスバーガーでアイスコーヒーを飲んでから、漫画喫茶へいった。ブラックなバイトでろくに歯も磨けないのだろう。やたら口の臭い可愛い女の子が受付してくれた。
23:00前に入店して、24:00過ぎに就寝。